(16)ベルリン~ウィーン [2003春パリからベルリンへの旅]
Leonor de Guzman: Violeta Urmana, Fernand: Giuseppe Sabbatini, Alphonse XI: Carlos Alvarez, Balthazar: Giacomo Prestia, Don Gaspar: Cosmin Ifrim
Ines: Genia Kühmeir
今回の旅で観たオペラの中で一番印象が薄く、年月が経った今はほとんど記憶にないという恐ろしいことになっています。
サバティー二の調子が悪く、高音にあげるときにのどが詰まった不快な感じがありました。またカルロス・アルバレツも以前に聴いたより、スケールが小さくなって無難に流れ熱いものが感じられません。フランス語の発音も納得しかねました。ヒロインのウルマーナは大柄なボディからの声量はあるものの、感銘を受けるほどの歌唱でもなかったのが惜しまれます。
ビデオの画面が舞台奥に並んだり、演出も陳腐でした。初めて見るオペラでもあり、予習は欠かせなかったのに、下のCDをようやく見つけ注文したのですが・・・あまり好きになれないままウィーンに来てしまったのです。
Ines: Loretta Di Lelio
(15)ベルリン [2003春パリからベルリンへの旅]
(14)ベルリン [2003春パリからベルリンへの旅]
隣席には日本からの40代くらいのご夫婦が座り、いろいろお話しました。この音楽祭がお目当てで、1週間ほど滞在されているそうです。
指揮:ダニエル・バレンボエム 演出:ハリー・クプファー
トリスタン:ベン・ヘップナー マルケ王:kwangchul Youn
イゾルデ:ワルトラウト・マイヤー コーウネル:アンドレアス・シュミッド
メロウ:ライナー・ゴルドベルグ ブランゲーネ:ローズマリー・ラング
マイヤーは3日前にウィーンでパルジファルのクンドリーを歌ったばかりです。声がなかなか飛んでこないという出だしではらはらしましたが、最後のほうは彼女らしい頑張りを見せて、感動的なシーンのうちに幕が降りました。和服のような袖のオリエンタルな衣装で、イゾルデの愛と死を歌います。誇らしげに舞台中央に立ったままで・・・幕。場内は感動に包まれて静寂が・・・とそのとき、ブーンと大きな鼻をかむ音がしました。何と無粋な!(怒)
2列目でしたから、思わずバレンボエムの方へ視線が・・・しかし、一仕事終えた男のすがすがしい横顔を見せて、静かに立っているマエストロでした。
トリスタンのヘップナーは2.3日前のリサイタルでアンコールを何曲も歌ったほど調子は良かったそうですが、この日は苦しく、最後まで不調。ほかはまあまあ。全般的に3年前のウィーンでの舞台には及ばないのは明らかでしたが、演出はこちらのほうが好みです。
(13)ウィーン~ベルリン [2003春パリからベルリンへの旅]
ヴィオレッタ:クリスティーネ・シェーファー アルフレット:ロナルド・ヴィラゾン
ジェルモン:トーマス・ハンプソン
(12)ウィーン [2003春パリからベルリンへの旅]
Amfortas:Franz Grundheber Titurel:Alfred Reiter Gurnemanz:Matti Salminen
Parsifal:Christopher Ventris Kundry:Waltraud Meier Klingsor:Wolfgang Bankl
一応はCDで予習はしたものの、映像をみていないせいかあらすじが良く理解できません。しかし、このワーグナーの最後の作品で「舞台神聖祝祭劇」と呼ばれているオペラは宗教色が強く、ワーグナーの楽劇のなかでは異色というか日本人には親しみが持てない作品かも知れません。私はワーグナーのオペラはこれが2つ目ですが、この素晴らしい音楽を予習して聴いているうちにプチワグネリアンと化してしまいました。本物のワグネリアン目指して、それには実際の舞台をみなければ・・・と、ワクワクしながらウィーン国立歌劇場へ向かいました。
シュナイダーの指揮とウィーン歌劇場のオーケストラ、それにエファーディングのオーソドックスな舞台は安心して観ていられるというものです。歌手陣もまとまっていて、特にサルミネンの低音が響くと、ますます安心感大(笑)。マイヤーは前年のミュンヘンでも感じたのですが、絶頂期に比べるとやや力が落ちたようです。この後3日後にベルリンでも歌いますから、力を出し切っていないのかとも思いました。しかし、演技力を含めた表現に優れていますから、金髪のロングヘヤーでパルジファルの足を洗う場面は聖書の場面のマッダレーナを彷彿とさせ、感動しました。オペラが好きですがそれ以上に美術、特にキリスト教美術に傾倒していますので、そちらの面からも私にとっては引き込まれやすい作品なのかも知れません。タイトルロールのヴェントリスは新人ですが、これからの活躍が期待できそうです。
隣席は日本人の若い男性とブリュッセル在住という中年の女性でした。若い男性は(珍しいことに)バレエが好きでそのために来られたとか、女性はカレーラスのファンでゲネプロを見せてもらったり、楽屋まで訪れる親しい間柄だそうです。イラク戦争のせいで服装など地味めなウィーンSOでした。
(11)ボローニャ~ローマ~ウィーン [2003春パリからベルリンへの旅]
☆ボルゲーゼ美術館 Galleria Borghese |
カラヴァッジョの何点かは何年か前の東京での展覧会に観ていました。でも「蛇の聖母または馬丁の聖母」↓は貸し出しされませんでした。ここのコレクションに入るいきさつもあり一番興味がありました。確かに胸をあらわにした聖母は俗っぽいけれど、とても綺麗に描かれ、カラヴァッジョらしい聖と俗の融合が闇に浮かび上がります。
↓カルパッチオの「女の肖像Cortigiana」この画家の女性像ってなんとなく中性っぽくて、ヴェネチァの娼婦らしくない・・・かといって素人の女性にも見えないし、不思議な絵です。
(10)ボローニャ(ポンポーザ&フェッラーラ) [2003春パリからベルリンへの旅]
↓ファサード
ドイツ人のご夫婦は御主人がイタリア語が堪能なので、いろいろお世話になりました。イタリアが好きで毎年イースター休暇にはあちこちのテルメに滞在して周辺を日帰りで回られるそうです。ドイツ人も温泉好きなのですね。そういう方法もなかなか良いなあ~と羨ましく思いました。
フェッラーラの駅でお互いにBuon Viaggio!!でお別れ。肥満気味の奥さんは足が弱いので、ご主人が労わりながら、遠ざかっていきました。
フェッラーラの町はジョルジョ・バッサー二の「フェラーラ物語」でも描かれ、とても興味のある町です。腰さえ調子良かったら、ゲットーの残る路地を歩いてみたかったのですが、結局はこの美術館だけで退散・・・とても残念でした。おまけに両替を忘れ、手持ちのユーロがぎりぎり。帰りのタクシーや電車賃を考えると、絵葉書をほんの2,3枚しか買えませんでした。(涙)
↓ スキファノイア宮の大理石の扉口
12暦とはいいながら、ロマネスクのゾディアックとはまったく違う月歴がそこには展開されています。図像学的にも説明は難解を極めています。異教的、占星的な場面と描かれた人物もフェッラーラ派らしい激しさを持っています。うち最もすぐれた東壁の3,4,5月はコッサの作と認められています。撮影禁止。
(9)ボローニャ(パルマ&モデナ) [2003春パリからベルリンへの旅]
12世紀から17世紀にいたるパルマの誇る美術に彩られ、見どころ満載。外観は洗礼堂とほぼ同時期に建てられた姿をとどめています。
☆パルマの洗礼堂
パルミジャニーノ展に入場する前にファルネーゼ劇場の見学。18世紀初頭に建てられた素晴らしい劇場はとても大事に保存されています。オペラの「リゴレット」の映像に使われているのを見て以来、ここへ来るのが楽しみでした。階段状の観客席を見ているとパバロッティの歌声が聴こえるよう・・・音響もすごく良さそうです。
本名とは別にパルマの画家というニックネームのついたほどの画家ですから、ここで開催された大規模な展覧会はその名前にふさわしく、世界中から集められた作品のほか彼に影響を与えた上記の画家たちの傑作も並べられたものでした。カタログが腰痛の身にはあまりに重く、購入を断念したのが今思えば非常に残念です。
ロマネスク、美術、そして食の都パルマも楽しみ、なんて幸せなの~と、つぶやきながら、再び列車に乗りモデナへ。
博物館も閉まる寸前に入館できました。ここには浮き彫り石板が8枚あり、この旅のあちこちで巡り会った「女と竜」(写真下)も展示されていました。黙示録からの図像というよりエヴァと誘惑の蛇に近いのでしょうか?。
エミール・マールは著書のなかでこう述べています。
「12世紀の人々はこの大きな旅を心から愛していた。彼等には巡礼こそはキリスト教徒としての人生そのものと思えたのである・・・」
鉄道駅から徒歩でも可能ですが、あいにく持病の腰痛がおきてしまったので、往復タクシーを使いました。現代の神ならぬ美への巡礼者はか弱いです・・・。明日はポンポーザへ行きますが、この腰の不調ではもう気力で行くしかないわ・・・と、ボローニャに戻りました。夕食は途中で持ち帰りのピザとビールで部屋食。
(8)ボローニャ [2003春パリからベルリンへの旅]
今はイラク戦争の真っ最中なのだと思うと、こうして遊んでいるのが後ろめたい気がして・・・。そんな気持ちを振払うように晴れた青空、それにボローニャの赤っぽい建物が綺麗で、見とれている内に心が和んできました。
斜塔から数分も歩くと柱廊の並ぶ向こうに、正しくはサント・ステファーノ教会群という、3つの教会が見えてきました。
指揮:Rinaldo Alessandrini 演出:Luca Ronconi
Cesare:Daniela Barcellona Cleopatra:Maria Bayo Cornelia:Sara Mingardo
Sesto: Monica Bacelli Tolomeo:Silvia Tro Santafe Acilla:sergio Foresti
舞台左手後方にオーケストラが座り、通常のオーケストラ席も舞台に利用。チェンバロなどソロを受け持つ3人は手前のオーケストラボックスで演奏。イタリアの古楽のオケも◎。
ビデオでの映像も写され(エリザベス・テーラーのクレオパトラなど)、衣装も綺麗で古代と現代を巧くミックスした演出でした。
タイトルロールのバルチェッローナはヘンデルには向かないようでしたが、ビジュアル的には大柄な彼女はぴったり。古代ローマの戦車に乗って颯爽と登場する彼女は本当に素敵!!バーヨは初めて聴きましたが、素直に伸びる艶やかな歌声に魅了され、いっぺんに大ファンになりました。ミンガルドとバッチェリ母子の切々とした歌唱にも泣かされました。アレッサンドリーニの指揮と優れたアリアや二重唱、通奏低音の響きなどが印象深く、バロックのオペラにますます惹かれることになった優れた公演でした。
↓プログラムとバルチェッローナの稽古スナップの写真
参考映像:ヘンデル(1685-1759)<エジプトのジュリオ・チェーザレ>
ホテルまでは数分なのに、オペラのはねたあと1本道を間違えたばかりに、ぐるぐる30分も歩き回り、ようやくホテルに戻れました。夜食はフリーズドライのお粥で済ませました。