11/29(日)
今日はロサンジェルスの街から北へ10Kほどの小高い山の上にあるポール・ゲティ美術館へ。タクシーで山の麓まで行き、そこからは美術館専用のケーブルカー(無料)があります。
☆ポール・ゲティ美術館(初)
石油王ポール・ゲッティの莫大な遺産を基金として1997年にオープンしたゲティ・センター。以前はマリブの私有地に「ゲティ・ヴィラ」ローマ時代の別荘スタイルの美術館を1974年に開館していたのですが、1976年ゲティの死後、遺族による訴訟もありましたが、ゲティの遺言どおりの遺産は美術館へ。世界一裕福な美術館といわれ入場は無料です。
↓ゲティセンター全景(Google earthより)美術館のほかゲティ研究所、オーディトリアム、美術・文化財関連のプログラムを推進するための施設があります。
↓ポール・ゲティ美術館前で
↓エントランス棟
↓エントランス棟を抜けると中庭、いくつかの展示館が中庭を囲むように建っています。
コレクションの中では必見の「中世写本コレクション」のある棟からいくつか巡りましたが、半日で全館を見学することは無理でした。
装飾写本はビザンティンのからロマネスク、ゴシック、ルネッサンスと素晴らしいものばかり。下の2点はドイツ・ロマネスク期のもの。カタログからスキャンしました
↓『Stammeim Missal』ドイツ・ヒルデスハイム 1160頃 ヒルデスハイムのSaint Bernwardを描いたもの
↓『Gospel Book』ドイツ・ヘルマースハウゼン 1120-40頃 聖マティス
ギャラリー第一室は祭壇画から始まります。ポール・ゲティの収集は古典美術や装飾美術を入手することから出発していますので、絵画蒐集は遅れましたが、莫大な資金をもとに名品を入手することに成功しました。
↓ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ『聖母戴冠』1420頃 87.5×64
↓マザッチオ『聖アンドリウス』1426 45.1×30.8
↓カルパッチョ『ラグーナの狩猟』1490-95頃 75.4×63.8
15~16世紀のヴェニスの風俗を描いたヴィットーレ・カルパッチョのこの作品は長い間行方不明だったのですが、1944年にローマで発見され、1979年にゲティ美術館に収蔵されました。そしてこの絵画にまつわる新しい事実が発見されました。以前ヴェニスのコッレール美術館でも触れましたが、この絵画が『2人のヴェニス婦人』の上部だったのです。
↓2枚を合わせると
↓レンブラント『エウロパの略奪』1632 62.2×77
牡牛に変身した神ユピテルがエウロパを背に乗せて誘拐する場面。レンブラント初期のドラマティックな作品。
↓ゴッホ『アイリス』1889 71×93
1987年にオークションで落札された作品を1990年にゲティ美術館が取得。当時の最高額で話題になりました。
↓アンスール『1889年のキリストのブリュッセル入城』1888-89 252.5×430.5
最大のスケールを持つアンスールの最も著名な絵画ですが、この展示室までたどり着けず、見逃しました。帰りに寄ったブックショップで絵葉書だけで・・・。
↓ランチをした展望レストラン。ロサンジェルス湾も遠くに見えました。日曜日なので混んでいましたが、軽食とはいえ驚くほど不味くて・・・建物が立派な分落差がひどい。
帰りのタクシーもトラム乗り場から拾い、無事ホテルに戻れました。休息の後、タクシーで初めてのロサンジェルス・オペラへ。高齢のタクシーの運転手さんは中学生のころ一家でロシアから亡命してきたそうで、それ以来何年もオペラを観ていないと寂しそうです。ロサンゼルスは地理的にもアジア系の移住者が多いのですが、いろいろな民族を受け入れてきたのです。国の政策によって故国に住み続けられない人々の苦労…現在も続く悲哀を想いました。
ビバリーヒルズ近くからロサンジェルス・オペラの本拠地ドロシー・チャンドラーパビリオンまで20Kくらい。道路を隔てて完成したばかりのウォルトディズニー・コンサートホールが見えました。設計はフランク・ゲーリー、音響設計は札幌コンサートと同じ会社が担当。音楽監督のサロネンが札幌に見学に来たそうなので、「お~これが」と感激。1か月早く来ればオープン記念の演奏会に間に合ったかも・・・。
♪~グルック『Orfeo ed Euridiceオルフェオとエウリディーチェ』
指揮:Hartmut Haenchen 演出:Lucinda Childs
Orfeo:Vivica Genaux Euridice:Maria Bayo
Amor,God of Love:Carmen Giannattasio
オーケストラ:Los Angels Opera Orchestra
オルフェのVivica Genauxはコントラルトに近いメッゾです。最近CDも出して売り出し中、若く長身で顔だちもきりっと濃いので、ズボン役にぴったり。ホーンやポドレスのような凄み?はありませんが、低音が柔らかく心地よく響きます。さて、おめあてのバーヨは第一声からさすがです。独特の張りのある声がビンビン飛んできます。振り向いて私を見て欲しいと歌うバーヨ、誰だって振り向くって....姿もホント美しい。休憩を含めて2時間弱、短いオペラのなかの短い出番なので、まだまだ彼女の声が聴きたいという欲求が残りました。
舞台は大きなスモーキイなガラス?を1?2枚使って、この世とあの世を隔てて見せます。全体にパステル画のような柔らかな色調、第2幕の地獄は炎で現わされますが、以前見た映像に比べるとあまり怖くありません。この場面のバレエや合唱もビデオで見たのと違って優雅に洗練されています。ハイライトの「我、エウリディーチェを失えり」もたっぷりと歌っていただきました。
終演後、外には一台もタクシーが停まっていません。99.9%が自家用車で来られるという(1ブロックでも車で移動するとか)いかにもアメリカの大都市です。ウロウロしているとガードマンさんに「誰か迎えに来るのか?」と訊かれ「ノー、タクシーが必要なの」というと案内ブースに行って頼んでくれて、助かりました。独りだったらどんなに心細かったでしょう。Y子さんがご一緒してくださって、本当に良かったです。
さすがに疲れてホテルに戻りお喋りなしで、それぞれの部屋に戻りました。
参考映像:グルック(1714-1787)<オルフェとエウリディーチェ>
Orfeo ed Euridice オルフェオ・・・・・・・・・・ ヨッフェン・コヴァルスキーエウリデイーチェ・・ジリアン・ウエブスター(ソプラノ)愛の神アモール・・ジェラミー・バッド(ボーイ・ソプ)コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団・合唱団指揮:ハルトムート・ヘンヒェン演出:ハリー・クプファーー収録:1991年7月コヴェント・ガーデン王立歌劇場99. 6 道新オペラ講座にて