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(13)チューリッヒ(ヴィンタートゥール) [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]

7/7(日)


 今夕は私だけ『オテロ』を観るので、あまり遠くへは行けません。友人たちはベルンへ、私はヴィンタートゥールへと別行動。チューリッヒからヴィンタートゥールまでは急行で25分。ここでのお目当ては「オスカー・ラインハルト・コレクション」です。実はここの富豪の家に生まれたオスカー・ラインハルトの収集した美術品は2つの美術館に分かれています。私はオールドマスターから印象派までを主に展示されている郊外の「オスカー・ラインハルト・コレクション・アム・レーマーホルツ」へ。もう一つのほうは「オスカー・ラインハルト美術館」と呼ばれて市内中心の市立公園に位置していて、世紀末のベックリンやホドラー、ドイツロマン派のフリードリッヒなどを展示しています。


さて、駅から「オスカー・ラインハルト・コレクション・アム・レーマーホルツ」までは1時間に1本ほどのバスがありますが、時間が合わずタクシーで向かいました。2Kほどの距離なので徒歩で30分くらいですが、丘を上るのでちょっときついかも。


☆オスカー・ラインハルト・コレクション・アム・レーマーホルツOSKER REINHART AM ROMERHOLZ(初)

 1958年オスカー・ラインハルトはレーマーホルツの自邸と土地とともにコレクションをスイス連邦に譲渡(改変しないという条件付きで)、公開されています。邸宅の南は芝生の庭園、北の背後は森林の広がる素晴らしい場所にあります。森林はハイキングやウォーキングの人たちが入っていくのが見えました。フット・パスが整備されているようです。


↓門から入りますと


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↓左に旧オスカー・ラインハルトの邸宅。右側に増築したらしいギャラリーの建物。


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玄関ホールはチケット売り場やブックショップ、その奥の居間だったらしい暖炉のある部屋にオールドマスターの作品が展示されています。


↓グリューネヴァルト「手を組んで嘆く女性」1512-1515頃 写真では鼻の下が黒く写ってしまいましたが、顎も含めて毛深い女性なのです。大事な人を喪った嘆きの声も聞こえそうな、グリューネヴァルトの痛いほどのリアリズム。美しく描くことより大事なものを描こうとしたのですね。「きれいは汚い、汚いはきれい」・・・。


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↓同じ部屋にヘラルド・ダーヴィッド「ピエタ」  哀しみの聖母マリアの蒼白な横顔に胸を突かれました。


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↓シャルダン「トランプの城」同主題の作品がロンドン・ナショナルギャラリーに、また模作ががパリのコニャック・ジェイ美術館にあります。遊びに夢中のバラ色の頬の少年が初々しい、魅力的な作品です。


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↓居間から渡り廊下を経て別棟のギャラリーへ。マネ、クールベ、ゴッホ、ドーミエなどの名画を自然光を取り入れた展示室で静かに鑑賞できました。


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↓ゴッホ「アルルの施療院の庭」1889 73×92 ゴッホは特にアルル時代の作品が素描も含めて数枚あり、どれも印象に残っています。

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カフェで一休み後タクシーを呼んでもらって駅へ戻り、列車でチューリッヒへ。中央駅の近くで中華飯店を見つけたので、焼売などの簡単なランチをとりました。味は普通ですが日本の3倍はするお値段でした。ただし余った焼売は夜食用に持ち帰りして、トラムでホテルに戻り仮眠。


♪~ヴェルディ『オテロ』20:00開演@チューリッヒ歌劇場


指揮・・・Vladimir  Fedoseyev   演出・・・Sven-Eric Bechtolf

オテッロ・・・Jose Cura   デズデモーナ・・・Daniela  Dessi 

イアーゴ・・・Ruggero  Raimondi  エミーリア・・・Bugitte Pinter    ロドリーゴ・・・Miroslav Christoff

オーケストラ&合唱・・・チューリッヒ歌劇場管弦楽団&合唱団

席は平土間やや後方の中央

 

 今回の旅の最後を飾るオペラは宇宙船内で起こった愛憎ドラマとしての演出です。舞台奥に大きなスクリーン、動く宇宙船から眺めた無限の空間が全幕とおして映し出されます。最初の嵐の場面ではそれが惑星の衝突のシーンと変わります。フェドセーエフの指揮はそのドラマティックな場面にあわせた素晴らしいもの、まったく新しいヴェルディに聞こえます。これは賛否両論かとも思うのですが、私は感動しました。オーケストラも昨日より格段に良く、この劇場の響きを堪能できました。最近評判のあまり良くないクーラのオテロ船長、宇宙船の閉ざされた空間のなかで、次第に妄想を深め心理的危

機状態に陥っていくさまを歌い、熱演。ただ、演技に比べると歌唱の表現が深くないので、こちら

に伝わってくるものが薄いのです。今夜のような努力を積み重ねて大成するしかないとつくずく思わされました。デズデモーナのデッシー、やはり働き過ぎ?(ミュンヘンで聴いたばかり)で調子が悪く、後半は代役が歌いました。この歌手の名前はその時はわかりませんでしたが、クーラの助けもあって、無事に歌い終わり、沢山の暖かい拍手をもらいました。代役のお知らせのとき、多分「ドレスがあ

わないのでご勘弁を」との説明があったのでしょう。観客が爆笑してて?。

背丈は良いのですが、胸がブカブカでした(^^;)。ライモンディのイアーゴは頭髪も短く、宇宙服も似合って、昨年のスカルピアに較べるととても若々しくみえました。第二幕、イアーゴの悪魔的な冷酷さを見せつける場面も圧巻。嫉妬に狂うへなちょこ?オテロより魅力的に見えてしまいます。代役が頑張ったとはいえ、デッシーの「柳の歌」と「アヴェ・マリア」が聞きたかったです。

ミュンヘンのアリーチェが素晴らしかっただけに、残念な気持ちが強いです。

 

↓オテロのホセ・クーラー(プログラムから)

 

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 追記:帰国後、代役の名前が判明しました。なんとエレーナ・プロキナでした。何ヶ月か後、偶然

彼女の歌う『エフゲニ・オネーギン』(グラインドボーン)を観る機会がありました。素晴らしいタチアナでした。

 

終演は11時過ぎ。今夜で今回の旅のオペラ観劇は終了です。アラーニャのキャンセルやチケット屋の夜逃げなど残念なアクシデントもありましたが、それぞれが想い出に残る舞台に接することができました。明日一日はのんびり観光することにします。

 











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(12)ミュンヘン~チューリッヒ [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]

7/6(土)ミュンヘンHbf12:14→チューリッヒHbf16:29


Zurich/Hotel Ambassador  3泊(シングル780CF(3泊分朝食込)


  雨模様の朝、ホテルをチェックアウトし、タクシーで中央駅まで。

↓列車に乗る前のIさん、E子さん


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駅構内に焼きソーセージ屋さんがあり、テイクアウトして、列車のなかで車内ランチ。列車は西へ国境を越え、ところどころに美しい湖の眺めを楽しみながらほぼ定刻にチューリッヒ中央駅に到着。チューリッヒは今回の旅の最後の滞在地です。なるべく歌劇場の近くに泊まりたかったので、劇場真裏のホテル・アンバサダーに3泊しました。スイスは物価が高いので、今回の旅の中では一番高いホテル代になりました。当時のレートで1泊2万円くらいでした。

ホテルはネットで予約できたのですが、問題だったのはオペラのチケットです。この時はFAXで申し込み、代金は銀行振り込みだったのです。そのためパリやミュンヘンに比べるとかなり高額になりました。そのうえ追加のチケットがとれたかどうかの返信が遅れ、「椿姫」を1枚余分に取ってしまったのです。ホテルで休養する間ももどかしく、開演1時間前に劇場の前に立ちチケットをさばこうとしましたが、上手くいきません。そんな私をみかねて、親切な青年が窓口に一緒に行って、売り場の人に払い戻しを頼んでくれました。当然キャンセルはできません。あきらめて、上の天井桟敷の席というこの好青年に差し上げると言ったのですが、上階のほうが音響が良いからと辞退されてしまいました。
そこへチケットの当日券を買いに現れた若い女性。窓口の係りに見られないように、陰に隠れてこっそり交渉。結局半額で譲ることになりました。この女性はロシア人で、お化粧や雰囲気がバレリーナのようで綺麗な方。舞台が終わった後、良い席で素晴らしいオペラが聴けたわと感謝され、嬉しかったです。

 

♪~ヴェルディ『椿姫』 19:30開演@チューリッヒ歌劇場



指揮:カルロ・フランチ    演出:ユリゲン・フリム

ヴィオレッタ:エヴァ・メイ   アルフレッド:ジュセッペ・フリアノーティ
ジェルモン:レオ・ヌッチ


席はファーストカテゴリー2階バルコンやや左の前列27100円(振込手数料込み)

 

 

 

さて、この公演のお目当てだったハンプソンはキャンセルの張り紙。がっかり。でも代役がヌッチなので、あまり文句も言えない気がしました。
エヴァ・メイはとても綺麗な声と容姿なのですが、繊細ではあるが、ヒロインとしては優等生的という感じで、線が弱いのが私には物足りなく思えました。フリアノーティとヌッチはまあまあ。小振りでクラシックなチューリッヒ歌劇場は気にいったのですが、この日の演奏にはいまいち乗れなかったのは友人たちも同様とのこと。ヴェルデイのドラマチックな盛り上げに欠けた舞台は少々残念。簡素な舞台装置も地味過ぎだったのです。
華美で空虚なデミ・モンドの世界から最後の薄幸なヴィオレッタの天に召されるシーンまで。文学的演劇的な表現がオペラとして昇華されないと、「椿姫」を観たと言う満足感は得られないのでしょう。オペラにのめりこむようになって数年。なかでも「椿姫」は道新教室でも一番多く鑑賞し、実舞台も札幌やオランジュ、パリと観てきました。

生意気にも求めるものも高くなってきているのかもと感じたチューリッヒの夜。。。

隣席の日本人のシニアの男性の方、今年のチューリッヒはぱっとしないと翌日観る予定の『オテロ』も酷評。(う~ん 聞かなければ良かった 汗)

 

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終演は10時半ころ、夜食はホテルのレストランが満席とのことで、ロビーにビールやチーズ、サラダなど運んでもらい、おしゃべりしながらいただきました。

↓バルコンの席で

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参考映像:GIUSEPPE VERDI『LA TRAVIATA』

 

 
ヴィオレッタ・・・・・テレサ・ストラータス(ソプラノ)
フローラ・・・・・・アクセル・ガル(メゾ・ソプラノ)
アンニーナ・・・・・ピーナ・チェイ(ソプラノ)
アルフレード・・・・・プラシド・ドミンゴ(テノール)
ジェルモン・・・・・・・コーネル・マクニール(バリトン)
ガストーネ子爵・・・マウリッツオ・バルバチーニ(テノール)
ドゥフォール男爵・・・アラン・モンク(バリトン)
ドビニー侯爵・・・・・リチャード・オネット(バス)
医師グランヴィル・・・ロバート・ソファー(バス)
ジュゼッペ・・・エルネスト・ガヴァッツイ(テノール)
フローラの召使・・エルネスト・パナリエッロ(バス)
使者・・・・シルベストロ・サッマリターノ(バス)
管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団
バレエ:ヴォリショイ劇場バレエ団
指揮・音楽監督:ジェイムス・レヴァイン
監督・脚本・美術:フランコ・ゼッフィレルリ
制作:1982年 ローマ 
*道新教室でみた映画版のもの。さすがゼフィレッリ!豪華版

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(11)ミュンヘン [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]

7/5(金)

 この日も友人たちとは別行動。喧嘩をしたわけではありません。先日体調が悪くなってノイエ・ピナコテークをパスした私に配慮してくれたのです。一緒に外出して、彼女たちが見つけた近くの日本食のレストランを教えてもらってから分かれて、私はノイエ・ピナコテークへ。一昨日、アルテ・ピナコテークで購入済みのコンビネーションチケットを使えました。寒いくらいだった昨日と違い、今日は暑くなりました。


☆ノイエ・ピナコテークNeue Pinakothek(2)

  1995年に次女と訪れていますので、今回は19世紀のドイツ絵画を主に鑑賞することにしました。ドイツロマン派からナザレ派、そしてベックリーンから始まる近代への歩み。世紀末ミュンヘン(ユーゲントシュティール)の美学も見逃せません。そして20世紀に入るとミュンヘンで結成された<青騎士たち>カンディンスキー、クレーなど。シュトゥックやマルクなどあまり知られていないけれど忘れがたい作品にも会える美術館です。


↓JOHANN FRIEDRICH OVERBECK オーヴァーベック「イタリアとゲルマニア」1828 (94.4×104.7)


左の月桂冠の女性はイタリアを右のブロンドの女性はゲルマニアを表しています。ナザレ派の画家はローマで宗教的な共同生活を送り、宗教美術の刷新を目指しました。この作品はドイツ中世への回帰と南方イタリアへの憧れが背景の景色とともに描かれています。



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  Arnold Böcklinベックリン「波間の戯れ」1883 180.3×237.5
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↓シュトゥック「原罪」1893年 96×59.7  蛇が絡みつく女=原罪のエヴァとは簡単に推察できない何かがうごめいているような怖い作品です。世紀末の男を破滅へと導く「ファム・ファタル」、革新的な俗悪さに秘めた世紀末の象徴主義。当時のミュンヘンの画壇に君臨したシュトゥックはミュンヘンで発行された芸術誌「ユーゲント」の中心人物でもあり、時代の寵児だったのです。


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初回の訪問で紹介したクリムトやクノップフの名品を鑑賞後、館内のカフェでビールとサーモンのパスタのランチ。帰途、和食屋で夜食用にお寿司をお持ち帰り。仮眠の後、生寿司のほうを少し食べてから劇場へ。


♪~ベッリーニ『清教徒』19:00~ @バイエルン州立歌劇場


舞台は私の好きなロマネスク聖堂風な建物、石壁が厚くシンプルな窓から

さす光は柔らかい。衣裳の色遣いも抜群のセンスです。プログラムには

↓ヴァン・ダイクの「Konigin  Henritta  Maria」の美しいチャールズ1世の妃の肖像画。

 

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エルヴィラの衣装や髪飾りなどはこの絵を参考にしたようです。このモデルはフランスからイギリス王家に嫁いだエンリッタ(劇中ではイタリア名エンリケッタ)オスカー・ワイルドの同名の詩が添えられて興味をそそられました。

エルヴィラの淡いグレイのサテンのドレスが石壁に美しく映えて。グルベローヴァのあの!!狂乱のコロラトゥーラは鳥肌のたつほどの感動。人間の声でこんなにも清らかで一途な表現ができるものなのか・・・と。

観られなかった東京でのボローニャ引越公演ではアルトゥーロをサバティーニが歌って大喝采だったそうですが・・・さて、ミュンヘンでのクンデです。尻上がりによくなったものの序盤は苦しげでした。

高音も振り絞ってようやくという歌唱で、がっかり。クンデはこの後だったと思いますが、「トロイの人々」(パリ・バスチーユ)は素晴らしく、復調してました。合唱は良かったのですが、他の歌手たちはほとんど印象に残らないほど・・・圧倒的なグルベローヴァの歌唱でした。。舞台袖のバルコン(右側・

)にずーっと詰めてらしたヨナスさんに、カーテンコールのとき誇らしげな笑顔で会釈するグルべ様でした。生きているうちにこれ以上のエルヴィラを聴くことはないでしょうねと友人たちと話しながら満足感と寂寥感、複雑な気持ちを抱えてホテルに帰りました。

 

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参考映像:Vincenzo Bellini『I Purtani』  2001 バルセロナ・リセウ劇場ライヴ盤

 

指揮:フリードリッヒ・ハイダー   演出:アンドレ・セルバン

 

ヴァルトン卿:コンスタンティン・ゴルニー   ジョルジョ:シモン・オルフィラ    アルトゥーロ:ホセ・ブロス   リッカルド:カルロス・アルバレス   エンリケッタ:ラクエル・ピエロッテイ

エルヴィラ:エディタ・グルベローヴァ

 

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参考CD:Bellini『I Puritani』1953録音

 

指揮:トゥリオ・セラフィン  オーケストラ:ミラノ・スカラ座管弦楽団

 

エルヴィーラ:マリア・カラス   アルトゥーロ:ジュセッペ・ステファノ   リッカルド:ロランド・パネライ

   ジョルジョ:二コラ・ロッシ・レメーニ   ブルーノ:アンジェロ・メルクリアーノ   ヴァルトン:カルロ・フォルティ   エンリケッタ:オーロラ・カッテラーニ

 

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(10)ミュンヘン [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]

7/4(木)

 今日は私一人がオペラ観劇『ワルキューレ』です。開演16:00なのであまり時間もなく、天気も悪いので近くを散策することにしました。州立劇場に隣接するレジデンツを見学。旧バイエルン王国ヴィッテルスバッハ王家の王宮。現在は博物館や劇場として公開されています。11時のからくり時計に間に合うように駆け足で回りマリエン広場へ向かいました。日本人ツアーの人たちに交じって見学。それにしても盛夏とは思えない冷たい雨が降ってきました。近くのデパートに駆け込み、厚手のレインコートや木綿編みセーターなどの買い物。どちらもサイズが合わず大きすぎですが、意外に重宝しました。宿に戻り休憩後劇場へ。


これまでの私の数少ないオペラ体験の中で、もっとも強力な印象を与えてくれた演出家はヘルベルト・ヴェルニケでした。彼の演出する『ワルキューレ』がミュンヘンであるとのことで、旅の予定はこの公演を中心に立て、無事にチケットも2月に予約。とても楽しみにしていたのです。

ところが、ヴェルニケは4月にバーゼルの路上にて倒れ、急逝してしまったのです。享年56歳。
そのニュースは地元の北海道新聞にも載ったほど。クラシック界のニュースはあまり取り上げられないので、夫が見つけ教えてくれました。ショックで、しばらく呆然。。。

ヴェルニケは自分の演出ではいつも装置や衣装も手がけ、その隙無く構築された舞台には魅了されました。女性歌手の衣装は常にエレガントなドレス姿。横向きに配する立ち姿の美しさは今でも目に焼きついています。時には大胆な読み替えも、私には少しの違和感もなく、洗練され、知的な刺激に満ちたものでした。完成することはなかったのですが遺作となった『ワルキューレ』。プログラムにも追悼記事が組まれ、ヨナス氏やニケ・ワーグナー女史の追悼文などに、多くのページが割かれています。ドイツ語なので読めないのは残念。


↓ワグナーの像を見上げるヴェルニケとニケ・ワーグナー?プログラムから転載


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 いよいよ幕が上がり、序曲が始まると胸が詰まり、熱いものがこみ上げてきました。今はただ冥福を祈るだけ・・・。


♪~ワーグナー『ワルキューレ』16:00開演 席は平土間前方左端。


指揮:ズービン・メータ  演出:ハンス・ペーター・レーマン/コンセプト:ヘルベルト・ヴェルニケ

ジークムント:ペーター・ザイフェルト   ジークリンデ :ワルトラウト・マイヤー
  ウォータン :ジョン・トムリンソン     ブリュンヒルデ:ガブリエレ・シュナウト
  フリッカ      :藤村実穂子             フンディング :クルト・リドル



 歌手たちも錚々たるメンバーを集め、メータの明快な指揮やオーケストラの輝かしい響き。席も平土間の前(4.5列目?)の左側。打楽器がやや左壁に反響するのにも慣れてきて、ワーグナーの世界にどっぷり。
舞台はバイロイトの歌劇場の内部を模して、中央にはワルハラ城の小さな模型が見える。1幕で剣を抜くシーンはトネリコの木が中央に倒れて置かれていて、意外に簡単に抜いてしまうのであれれ!マイヤーが昨年のウィーンの時より痩せていて、そのためか声にあのときの艶やかさには及ばない。ジョン・トムリンソンは全盛期を過ぎたとはいえ、この役はやはり彼しか考えられない。
2幕の騎行の場面、乙女たちは華やかなロングドレスにミリタリーなカーキ色のトレンチコートスタイルで、せっせと戦死した兵士たち(人形)を運ぶ。
3幕の父と娘の別れは、恋人たちの別れのように切ない。シュナウトは初めて聴いたのですが、登場した時から全開の見事な歌唱に驚きました。ザイフェルトは一時不調とのことで心配でしたが、素晴らしい歌唱で、完全復帰といっていいでしょう。ジークムントにしてはやや軽めなテノールかもしれないが、悲劇のヒーローらしい切なさと若さが表現されていました。藤村も完璧なフリッカ!最後のシーン岩山に炎が点火される場面はちょろちょろの炎で物足りない。そのせいか幕が下りたとたんにブーが飛んで。天国のヴェルニケにもこのブーが届いたような気がして、思わず首をすくめてしまいました。今でもあのときの舞台が鮮烈に蘇ってきますが、ところどころ何故一角獣が?とか不明な部分も。でもメータの指揮やオーケストラも含めて一体感のある優れた舞台で、ワーグナーを満喫できました。

30分の休憩2回を含めて6時間。疲れ果てお粥の夜食。


参考映像:ワーグナー:楽劇《ヴァルキューレ》全曲1980年収録/クラシカジャパンで放映

ジークムント…ペーター・ホフマン(テノール)
フンディング…マッティ・サルミネン(バス)
ヴォータン…ドナルド・マッキンタイア(バリトン)
ジークリンデ…ジャニーヌ・アルトマイア(ソプラノ)
ブリュンヒルデ…グィネス・ジョーンズ(ソプラノ)
フリッカ…ハンナ・シュヴァルツ(メッゾ・ソプラノ)
ゲルヒルデ…カルメン・レッペル(ソプラノ)
オルトリンデ…カレン・ミドルトン(ソプラノ)
ヘルムヴィーゲ…カティ・クラーク(ソプラノ)
ヴァルトラウテ…ガブリエレ・シュナウト(メッゾ・ソプラノ)
ジークルーネ…マルガ・シムル(ソプラノ)
グリムゲルデ…イルゼ・グラマツキ(アルト)
シュヴェルトライテ…グェンドリン・キレブリュー(メッゾ・ソプラノ)
ロスヴァイゼ…エリーザベト・グラウザー(アルト)

バイロイト祝祭管弦楽団
指揮:ピエール・ブーレーズ
演出:パトリス・シェロー


参考CD:ワーグナー:楽劇《ヴァルキューレ》全曲1965年収録

ジークムント・・・ジェームス・キング

ジークリンデ・・・レジーヌ・クレスパン

フンディング・・・ゴットローブ・フリック

ヴォータン・・・ハンス・ホッター

フリッカ・・・クリスタ・ルードヴィッヒ

ブリュンヒルデ・・・ビルギット・ネルソン

オルトリンデ・・・ヘルガ・デルネッシュ

ヴァルトラウテ・・・ブリギッテ・ファスベンダー

シュヴェルトライテ・・・ヘレン・ワッツ

ヘルムヴィーゲ・・・ベリット・リンドホルム

ジークルーネ・・・ヴェラ・リトゥル

グリムゲルデ・・・マリリン・タイラー

ロスヴァイセ・・・クラウディア・ヘルマン


指揮・・・サー・ゲオルグ・ショルティ

ウィーン・フィルハーモニー


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