(15&16)チューリッヒ~千歳 [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]
(14)チューリッヒ(ルツェルン) [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]
(13)チューリッヒ(ヴィンタートゥール) [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]
指揮・・・Vladimir Fedoseyev 演出・・・Sven-Eric Bechtolf
オテッロ・・・Jose Cura デズデモーナ・・・Daniela Dessi
イアーゴ・・・Ruggero Raimondi エミーリア・・・Bugitte Pinter ロドリーゴ・・・Miroslav Christoff
オーケストラ&合唱・・・チューリッヒ歌劇場管弦楽団&合唱団
席は平土間やや後方の中央
今回の旅の最後を飾るオペラは宇宙船内で起こった愛憎ドラマとしての演出です。舞台奥に大きなスクリーン、動く宇宙船から眺めた無限の空間が全幕とおして映し出されます。最初の嵐の場面ではそれが惑星の衝突のシーンと変わります。フェドセーエフの指揮はそのドラマティックな場面にあわせた素晴らしいもの、まったく新しいヴェルディに聞こえます。これは賛否両論かとも思うのですが、私は感動しました。オーケストラも昨日より格段に良く、この劇場の響きを堪能できました。最近評判のあまり良くないクーラのオテロ船長、宇宙船の閉ざされた空間のなかで、次第に妄想を深め心理的危
機状態に陥っていくさまを歌い、熱演。ただ、演技に比べると歌唱の表現が深くないので、こちら
に伝わってくるものが薄いのです。今夜のような努力を積み重ねて大成するしかないとつくずく思わされました。デズデモーナのデッシー、やはり働き過ぎ?(ミュンヘンで聴いたばかり)で調子が悪く、後半は代役が歌いました。この歌手の名前はその時はわかりませんでしたが、クーラの助けもあって、無事に歌い終わり、沢山の暖かい拍手をもらいました。代役のお知らせのとき、多分「ドレスがあ
わないのでご勘弁を」との説明があったのでしょう。観客が爆笑してて?。
背丈は良いのですが、胸がブカブカでした(^^;)。ライモンディのイアーゴは頭髪も短く、宇宙服も似合って、昨年のスカルピアに較べるととても若々しくみえました。第二幕、イアーゴの悪魔的な冷酷さを見せつける場面も圧巻。嫉妬に狂うへなちょこ?オテロより魅力的に見えてしまいます。代役が頑張ったとはいえ、デッシーの「柳の歌」と「アヴェ・マリア」が聞きたかったです。
ミュンヘンのアリーチェが素晴らしかっただけに、残念な気持ちが強いです。
↓オテロのホセ・クーラー(プログラムから)
追記:帰国後、代役の名前が判明しました。なんとエレーナ・プロキナでした。何ヶ月か後、偶然
彼女の歌う『エフゲニ・オネーギン』(グラインドボーン)を観る機会がありました。素晴らしいタチアナでした。
終演は11時過ぎ。今夜で今回の旅のオペラ観劇は終了です。アラーニャのキャンセルやチケット屋の夜逃げなど残念なアクシデントもありましたが、それぞれが想い出に残る舞台に接することができました。明日一日はのんびり観光することにします。
(12)ミュンヘン~チューリッヒ [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]
ホテルはネットで予約できたのですが、問題だったのはオペラのチケットです。この時はFAXで申し込み、代金は銀行振り込みだったのです。そのためパリやミュンヘンに比べるとかなり高額になりました。そのうえ追加のチケットがとれたかどうかの返信が遅れ、「椿姫」を1枚余分に取ってしまったのです。ホテルで休養する間ももどかしく、開演1時間前に劇場の前に立ちチケットをさばこうとしましたが、上手くいきません。そんな私をみかねて、親切な青年が窓口に一緒に行って、売り場の人に払い戻しを頼んでくれました。当然キャンセルはできません。あきらめて、上の天井桟敷の席というこの好青年に差し上げると言ったのですが、上階のほうが音響が良いからと辞退されてしまいました。
そこへチケットの当日券を買いに現れた若い女性。窓口の係りに見られないように、陰に隠れてこっそり交渉。結局半額で譲ることになりました。この女性はロシア人で、お化粧や雰囲気がバレリーナのようで綺麗な方。舞台が終わった後、良い席で素晴らしいオペラが聴けたわと感謝され、嬉しかったです。
♪~ヴェルディ『椿姫』 19:30開演@チューリッヒ歌劇場
指揮:カルロ・フランチ 演出:ユリゲン・フリム
ヴィオレッタ:エヴァ・メイ アルフレッド:ジュセッペ・フリアノーティ
ジェルモン:レオ・ヌッチ
席はファーストカテゴリー2階バルコンやや左の前列27100円(振込手数料込み)
|
|
さて、この公演のお目当てだったハンプソンはキャンセルの張り紙。がっかり。でも代役がヌッチなので、あまり文句も言えない気がしました。 生意気にも求めるものも高くなってきているのかもと感じたチューリッヒの夜。。。
終演は10時半ころ、夜食はホテルのレストランが満席とのことで、ロビーにビールやチーズ、サラダなど運んでもらい、おしゃべりしながらいただきました。 ↓バルコンの席で
参考映像:GIUSEPPE VERDI『LA TRAVIATA』
|
(11)ミュンヘン [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]
Arnold Böcklinベックリン「波間の戯れ」1883 180.3×237.5 |
さす光は柔らかい。衣裳の色遣いも抜群のセンスです。プログラムには
↓ヴァン・ダイクの「Konigin Henritta Maria」の美しいチャールズ1世の妃の肖像画。
エルヴィラの衣装や髪飾りなどはこの絵を参考にしたようです。このモデルはフランスからイギリス王家に嫁いだエンリッタ(劇中ではイタリア名エンリケッタ)オスカー・ワイルドの同名の詩が添えられて興味をそそられました。
エルヴィラの淡いグレイのサテンのドレスが石壁に美しく映えて。グルベローヴァのあの!!狂乱のコロラトゥーラは鳥肌のたつほどの感動。人間の声でこんなにも清らかで一途な表現ができるものなのか・・・と。
観られなかった東京でのボローニャ引越公演ではアルトゥーロをサバティーニが歌って大喝采だったそうですが・・・さて、ミュンヘンでのクンデです。尻上がりによくなったものの序盤は苦しげでした。
高音も振り絞ってようやくという歌唱で、がっかり。クンデはこの後だったと思いますが、「トロイの人々」(パリ・バスチーユ)は素晴らしく、復調してました。合唱は良かったのですが、他の歌手たちはほとんど印象に残らないほど・・・圧倒的なグルベローヴァの歌唱でした。。舞台袖のバルコン(右側・
)にずーっと詰めてらしたヨナスさんに、カーテンコー・ルのとき誇らしげな笑顔で会釈するグルべ様でした。生きているうちにこれ以上のエルヴィラを聴くことはないでしょうねと友人たちと話しながら満足感と寂寥感、複雑な気持ちを抱えてホテルに帰りました。
参考映像:Vincenzo Bellini『I Purtani』 2001 バルセロナ・リセウ劇場ライヴ盤
指揮:フリードリッヒ・ハイダー 演出:アンドレ・セルバン
ヴァルトン卿:コンスタンティン・ゴルニー ジョルジョ:シモン・オルフィラ アルトゥーロ:ホセ・ブロス リッカルド:カルロス・アルバレス エンリケッタ:ラクエル・ピエロッテイ
エルヴィラ:エディタ・グルベローヴァ
参考CD:Bellini『I Puritani』1953録音
指揮:トゥリオ・セラフィン オーケストラ:ミラノ・スカラ座管弦楽団
エルヴィーラ:マリア・カラス アルトゥーロ:ジュセッペ・ステファノ リッカルド:ロランド・パネライ
ジョルジョ:二コラ・ロッシ・レメーニ ブルーノ:アンジェロ・メルクリアーノ ヴァルトン:カルロ・フォルティ エンリケッタ:オーロラ・カッテラーニ
(10)ミュンヘン [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]
ところが、ヴェルニケは4月にバーゼルの路上にて倒れ、急逝してしまったのです。享年56歳。
そのニュースは地元の北海道新聞にも載ったほど。クラシック界のニュースはあまり取り上げられないので、夫が見つけ教えてくれました。ショックで、しばらく呆然。。。
ヴェルニケは自分の演出ではいつも装置や衣装も手がけ、その隙無く構築された舞台には魅了されました。女性歌手の衣装は常にエレガントなドレス姿。横向きに配する立ち姿の美しさは今でも目に焼きついています。時には大胆な読み替えも、私には少しの違和感もなく、洗練され、知的な刺激に満ちたものでした。完成することはなかったのですが遺作となった『ワルキューレ』。プログラムにも追悼記事が組まれ、ヨナス氏やニケ・ワーグナー女史の追悼文などに、多くのページが割かれています。ドイツ語なので読めないのは残念。
いよいよ幕が上がり、序曲が始まると胸が詰まり、熱いものがこみ上げてきました。今はただ冥福を祈るだけ・・・。
ジークムント:ペーター・ザイフェルト ジークリンデ :ワルトラウト・マイヤー
ウォータン :ジョン・トムリンソン ブリュンヒルデ:ガブリエレ・シュナウト
フリッカ :藤村実穂子 フンディング :クルト・リドル
舞台はバイロイトの歌劇場の内部を模して、中央にはワルハラ城の小さな模型が見える。1幕で剣を抜くシーンはトネリコの木が中央に倒れて置かれていて、意外に簡単に抜いてしまうのであれれ!マイヤーが昨年のウィーンの時より痩せていて、そのためか声にあのときの艶やかさには及ばない。ジョン・トムリンソンは全盛期を過ぎたとはいえ、この役はやはり彼しか考えられない。
2幕の騎行の場面、乙女たちは華やかなロングドレスにミリタリーなカーキ色のトレンチコートスタイルで、せっせと戦死した兵士たち(人形)を運ぶ。
3幕の父と娘の別れは、恋人たちの別れのように切ない。シュナウトは初めて聴いたのですが、登場した時から全開の見事な歌唱に驚きました。ザイフェルトは一時不調とのことで心配でしたが、素晴らしい歌唱で、完全復帰といっていいでしょう。ジークムントにしてはやや軽めなテノールかもしれないが、悲劇のヒーローらしい切なさと若さが表現されていました。藤村も完璧なフリッカ!最後のシーン岩山に炎が点火される場面はちょろちょろの炎で物足りない。そのせいか幕が下りたとたんにブーが飛んで。天国のヴェルニケにもこのブーが届いたような気がして、思わず首をすくめてしまいました。今でもあのときの舞台が鮮烈に蘇ってきますが、ところどころ何故一角獣が?とか不明な部分も。でもメータの指揮やオーケストラも含めて一体感のある優れた舞台で、ワーグナーを満喫できました。
ジークムント…ペーター・ホフマン(テノール)
フンディング…マッティ・サルミネン(バス)
ヴォータン…ドナルド・マッキンタイア(バリトン)
ジークリンデ…ジャニーヌ・アルトマイア(ソプラノ)
ブリュンヒルデ…グィネス・ジョーンズ(ソプラノ)
フリッカ…ハンナ・シュヴァルツ(メッゾ・ソプラノ)
ゲルヒルデ…カルメン・レッペル(ソプラノ)
オルトリンデ…カレン・ミドルトン(ソプラノ)
ヘルムヴィーゲ…カティ・クラーク(ソプラノ)
ヴァルトラウテ…ガブリエレ・シュナウト(メッゾ・ソプラノ)
ジークルーネ…マルガ・シムル(ソプラノ)
グリムゲルデ…イルゼ・グラマツキ(アルト)
シュヴェルトライテ…グェンドリン・キレブリュー(メッゾ・ソプラノ)
ロスヴァイゼ…エリーザベト・グラウザー(アルト)
バイロイト祝祭管弦楽団
指揮:ピエール・ブーレーズ
演出:パトリス・シェロー
(8&9)サン・マロ~パリ~ミュンヘン [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]
ファルスタッフ:ブリン・ターフェル フォード:ルチオ・ガッロ アリーチェ:ダニエラ・デッシー
バルドルフォ:アンソニー・メイー メグ:パトリシア・リスレイ ミセス・クイックリー:ジュネ・ヘンシェル ナンネッタ:レヴェッカ・エヴァンス フェントン:ライナー・トロスト
4月にNYで見た『ファルスタッフ』はゼッフレッリ演出のオーソドックス&豪華版だったが、こちらは今をときめくミュンヘン夏の音楽祭とあってシンプルながら良く練られた楽しい演出でした。開演前から薄い紗のカーテンの向こうに舞台が透けて見え、楕円形の木製?盤がやや傾いて置かれている。手前にターフェルがガウン姿で背を向け座っています。その背が何故か元気が無く見えて・・・その時、ヨナスさんが現れて「ターフェルが腰痛のため本来の動きは難しいが、歌は良いものを聞かせてくれるでしょう」と挨拶されました。ドイツ語のため理解不能でしたが、休憩のとき友人が係員に英語で説明してもらい分かりました。
そのせいで、ターフェルに関してはメトのときのほうが歌、演技とも生き生きしていました。カーテンコールのとき、自分でも不本意だったのでしょう、腰を指さしして彼らしい困ったちゃん仕草をして、笑いを誘いました。「ターフェルくん、良く頑張ってくれてありがとう!!」。
他の歌手はすべてと言っていいほどMETよりこちらのほうが勝ち!特にデッシーのアリーチェは素晴らしかったです。ガッロはマチェラータでも聴いたことがあったのですが、軽めのバリトンがこの役にぴったり。イギリス人ならぬイタリア男っぽい情熱的な嫉妬深さもユーモラス。
演出全体がポップでチャーミングのうえにオーケストラも金管の音がソフトに響いて花◎。ただし、ここの劇場の欠点は木製の椅子の音がギシギシと絶え間なく聞こえること。このテアトルは初めてだったので余計に気になりましたが、この後3回目では慣れました。(マイHPから)