(3)カリアリ(ウタ、ヴィラスペチオーザ)~オリスターノ(サンタ・ジュスタ) [2005年夏サルデーニャ・ロマネスクとオペラ]
6/23(木)
スーツケースをホテルに預け、5泊分の荷物を小型のキャリーケースに詰めていよいよサルデーニャの地方めぐりに出発です。ホテルで頼んだタクシーに乗ってカリアリから北西へ25キロくらいの小さな町ウタUtaを目指します。ウタはバスの便もありますが、もうひとつのVilla Speciosaへ行く方法が不透明(徒歩は無理)なためタクシーを使いました。
サンタ・マリア教会はウタの町を通り抜けたはずれにぽつんと建っていました。係員が常駐しています。「日本人はロマネスクが好きだね。先週もグループが来てたよ」とややアキレ気味。でも嬉しそうでした。建物の向かって左の一画には古代ローマ時代の遺跡も保存されています。
☆ウタのサンタ・マリア教会Santa Maria
12世紀前半に修道院教会として創建。外壁は薄茶色の花崗岩。トップに壁式の鐘塔。ロンバルディア帯の小さな持ち送りがファサードや側面を飾っています。
↓正面扉口のタンパン
この教会もほぼ元の形ですが、昨日訪れたDlianovaに比べると、小型でつつましい感じがしました。素敵~!とつぶやきながら外壁の粗い石の感触を確かめていますと、するするとイモリが壁を這っています。爬虫類はとても苦手なのですが、なぜかここでは可愛い~!と思っている自分が・・・不思議。↓後背部
内部は三廊式のバジリカ様式で、後陣上部の明り取りの窓からやわらかな光が差し込んできます。
その小さな窓を見上げていると、ふうっと何故か体が軽くなった心地。そして母の胎内にいるような無垢な気持ち。そんなイメージが湧いてきました。
せかせかとロマネスク聖堂を巡るべきではないのです。ここはサルデーニャ・ロマネスクでもそれほど知られている教会ではありませんが、こうして無心になれるひと時に恵まれたことに感謝しながら、次の目的地2.5キロのVilla Speciosaへ向かいました。
車だとあっという間に隣の町に着きます。小さな町の広場にたむろしているおじいさんたちに教会の場所を訊くと、不思議そう&好奇な目で見られてしまいました。(はいはい物好きなんです)
教会は町外れの大きな公園の隣のだだっ広い空き地にぽつんと建っています。鍵がかかっていましたので、運転手さんが管理者の家をさがして鍵を開けてもらいに行ってくれたのですが、残念ながら留守でした。
教会は町外れの大きな公園の隣のだだっ広い空き地にぽつんと建っています。鍵がかかっていましたので、運転手さんが管理者の家をさがして鍵を開けてもらいに行ってくれたのですが、残念ながら留守でした。
☆ヴィラスペチオーザのサン・プラターノ教会San Platano
その間に私はゆっくり外観を見学しました。外壁は白やさまざまなヴァリエーションの花崗岩や白い大理石をつぎはぎして、パッチワークのようです。正面上部の簡素な鐘楼はUtaのサンタ・マリアに似ています。その下の丸い飾りもパッチワーク風。村の人たちが石を集めて建てた、いかにも手造りという感じが好ましく見えましたが、実際はトスカーナや地元の石工たちによるもの。後陣の2連の祭室も小さく可憐な佇まい。
↓結局管理人さんは留守で、内部は見学できませんでした。見取り図によりますと、単廊式の内部は中央の2本の太い柱によって支えられています。窓はどうやら正面左扉口の上1と後陣2の合わせて3箇所のようです。
今日も朝から暑く、さえぎる木陰もないここは日射病になりそうで、中に入れないとなると長居はできません。乗り込んだ車から遠ざかる教会を振り返えると、古びた小さな宝石箱のような教会が青空に浮かんで見えました。素晴らしいロケーション!
カリアリの駅に戻り、列車を待つ間プラットホームのBarで簡単ランチを済ませ、オリスターノへ。
Cagliari14:03→Oristano15:35
Cagliari14:03→Oristano15:35
1時間半の列車の旅でオリスターノに到着。駅前からタクシーで郊外のサンタ・ジュスタ教会へ。
サンタ・ジュスタという同名の沼の近くにあります。公園のような広い敷地の小高い場所に堂々とした姿。
☆サンタ・ジュスタ教会Santa Giusta
教会は1135年頃にピサから来た工匠たちによって建設されました。タンパンの十字架の上の三連のアーチに両脇のすっきりした2本のつけ柱。下から見上げると建物の高さが強調される効果でしょう。大きな教会で開いてると思っていたのですが、無常にも扉は堅く閉まってました。
後背部に周りますとひとつの半円形の後陣。両脇はシメトリカルに平坦な造り。左側に鐘楼と端正な佇まいです。
見取り図を見ますと内部は三廊式バジリカ、内陣はやや高くなっていて、その下がクリプタです。
旧市街の外にあるオリスターノのホテルは海辺が近いこともあってリゾートの家族連れの多いところ。広いロビーからプールも見えます。迎えてくれたレセプションの女性は感じよく、お部屋も静かで良い宿でした。特にレストランがGOOD!!大衆的な値段と雰囲気。気楽にサルデーニャの海鮮(スカンピやボッタルガ)をたっぷり食べられて、幸せでした。
(2-2)カリアリ(ドリアノーヴァ) [2005年夏サルデーニャ・ロマネスクとオペラ]
~続きです。
Cagliari(Monserrato)13:30→Dolianova14:10/15:44→Cagliari(Monserrato)16:34
サン・サトゥルノ教会裏手からイタリア旅行協会公式ガイドの地図をたよりにDolianovaへ行くための駅を探しました。徒歩数分の裁判所のある大きな広場へ。しかし地図にある駅付近にはバス停があるだけです。運転手さんに聞いてみると、このバスに乗って途中から列車に乗り換えるというような説明です。まあ何とかなるでしょうとバスに乗り込むとまもなく出発。10分ほどでカリアリ郊外の駅へ。すでに列車が待機していました。市内だけ廃線にしたのでしょうか?列車には観光客はほとんど乗っていなくて、切符は車内で買いました。そのためお財布を出したのですが、向かいに座ってた女性がなんとかかんとか言って、手を出すのでびっくり(小銭狙い?)ノンノンですぅ~。40分ほどでDolianovaに到着しました。この町の地図はガイド本には載っていません。駅員さんが何人か立っていましたので教会の場所を尋ねましたら、ちょうど昼食に家に帰るから車で送ってあげるというのです。丘の上1キロほどの距離でしたから、助かりました。サルデーニャで初めて親切明朗な男性に会えました。
☆ドリアノーヴァのサン・パンタレオ教会San Pantaleo
12~13世紀のロマネスク様式。プランは翼廊のないバジリカ形式で正面左に鐘塔が付随。外壁は煉瓦、屋根は赤い瓦。長い年月を経ていますが、元の姿を大きく変えることなく凛とした気品を漂わせて建っています。扉に鍵がかかっていて入れませんので隣の管理棟らしい家の呼び鈴を押しましたが、応答なし。内部は見学かなわずでした。左の鐘楼や付け柱もがっちりした印象を強めています。
↓正面中央の扉口の大理石の(歪んだ写真では白く見える)まぐさ石は修復が済んだばかりでしょうか、珍しい絡み合った蛇やさそりの浮き彫り。その上のタンパンを縁取るアーチトレーヴも蛇です。すぐ脇に小さなアダムとイヴの浮き彫りがありますので、この蛇は誘惑のシンボルと思います。教会に入る前の戒めでしょう。写真ではよく見えませんが、壁面はところどころに人や動物のプリミティブな小さな浮き彫りで飾られています。
↓北側扉口の記念墓所の上の浮彫
↓後姿も素敵です。
↓振り返りながらお別れです
↓Google Earthより
教会の周辺は比較的新しい住宅が並んでいます。カリアリに通勤する会社員が多いのかも。暑い日の昼下がり、眠ったように静かな町でした。遅い昼食を駅の近くのBarで簡単に済ませ、カリアリに戻りました。元のバス停に到着した後は徒歩15分くらいのホテルへ。夕方でもまだまだ陽は高く、たまらず途中のバールに飛び込みビールをぐぃっ!。
部屋で休んだ後は8時ごろ夕食へ。ホテルの近くの食堂の並ぶ横丁で、散歩中のおじいさんご推薦の海鮮レストランへ。魚介の前菜やパスタ。味は普通。(期待しすぎたようで・・・)
(2-1)カリアリ [2005年夏サルデーニャ・ロマネスクとオペラ]
6/22(水)
涼しい北海道から出てきた身には辛い暑い一日でした。快適な冷房の効いたホテルを出たとたん「うわ~暑い!」ホテルの前の坂道を登りながら強い日差しにクラクラ状態でした。地図をたよりにまずサン・レミの見晴台Bastione di Saint Remyで、カリアリの町並みを眺めたあと、
細い路地↓を歩くと突き当たりに大聖堂の広場が見えてきました。
↓右手の階段を上ると大聖堂。ピサ様式の正面の装飾が素敵です。
☆カリアリ大聖堂Cattedrale
カリアリの丘の上の旧市街に建つ大聖堂。ピサ・ロマネスク様式のファサードが明るい日差しに映えています。
↓ファサード内側の説教壇は修復工事中でした。巨匠グリエルモがピサの大聖堂のために制作したものの一部で1312年にカリアリに贈られました。
↓14世紀の黒いマリア像?(確認取れてません)
☆国立考古学博物館
大聖堂から聖パンクラツィオの塔の脇をくぐり抜けて、国立考古学博物館へ。先史時代から中世初期までの発掘した出土品を展示しています。カメラ禁止だったのか、写真は残っていませんが小さな多分お墓の副葬品だったと思われる、戦士や母神像など。フェニキア~古代カルタゴ~古代ローマとサルデーニャの他民族に征服された歴史や文化を知ることができました。特にヌラーゲ時代のもの、初期キリスト教美術に関するものは興味深く見学。
↓聖パンクラツィオの塔
博物館からカテドラーレへ戻る途中に広場があり、エレベーターの表示が見えました。方向からいっても次に目指すS.Saturnino側です。これで降りると広い道路に出ます。少し歩くと元のサン・レミの上り口。ここから緩やかな坂道をくだり旧市街へ。迷路のようなチッタ・バッサ(下町)を10分ほど歩くと、サルデーニャで最も古い教会の遺構に到着しました。係員が待機していますが、時間制(昼休みあり)です。見学者は私ひとりでした。
☆サン・サトゥルニーノSan Saturnino教会
創建は6世紀ですが、11~12世紀にロマネスク様式に建て替えられました。前の部分は崩れ落ちた後は写真でもお分かりのようにガラスで囲われ、保護されています。(向かいの建物が映っています)内部に入るとすぐが大きなドーム天井の下のホール。左右ともガラス張りなので明るい空間になっています。建物の両脇の発掘のあとは2~5世紀の異教及び初期キリスト教の墓地だったとのこと。内部は撮影不可。古代の柱頭や簡素な祭室がいかにもプレ・ロマネスク。気持ちが洗われるような空間でした。いったん外に出てから広い敷地の建物の後ろに廻ってみました。高い柵がめぐらされ大事に守られています。紫のジャカランダの花を背景に建つ姿をうっとり眺めながら次の目的地へ。
↓Google Earthから
続きます~。
(1)札幌~ローマ~カリアリ [2005年夏サルデーニャ・ロマネスクとオペラ]
6/21(火)札幌8:30→東京羽田10:00/成田13:00→ローマ18:40/20:40→カリアリ21:45
Cabliari/Regina Margherita 2泊
早朝涼しい札幌を出発して、午後の東京発JAL便でローマへ。到着したローマの空港はあまり冷房が効いていないので、イタリアはもう真夏?スムーズな乗換えでサルデーニャへ向かいました。飛行機の窓からは、夕日が海面に反射して黄金色に染まったティレニア海です。息をのむその美しさにサルデーニャの旅の実感がわいてきました。島に近づくころは夕闇が迫り、カリアリ上空にさしかかったころはすでに夜です。初めてのサルデーニャ上陸で、少々心細い気持ちになっていました。
空港では荷物を待つ間、留守宅に「無事到着」のEmailをしましたが、送信できません。ローマでは送信できたのに・・・不安な気持ち。そしてトランクがターン・テーブルに現れません。ロスト・バッゲージのカウンターに行ってみますと行列です。ようやく、順番がきて訊ねてみました。奥のインターナショナルのほうにあるとのこと。何故?別のところにあるのかしら・・・係員も無愛想。指差す奥の部屋に行ってみましたら、隅に私の大事なトランクが転がっていました。おまけにタクシー乗り場も行列。心細そうな東洋のおばさんを見ても、「お先にどうぞ」と、順番を譲ってくれることもなく…イタリアらしくなくない陰気な雰囲気が漂ってました。ようやくタクシーの順番が来て、ホテルに着いたのは11時半過ぎていました。そんなこんなでハラハラのサルデーニャ上陸の夜でした。
↓MAP
↓日程/17泊19日
札幌→カリアリ(2)~オリスターノ(2)~サッサリ(2)~オルビア(1)~カリアリ(1)→ミラノ(2)~ヴェローナ(1)~ミュンヘン(3)→パリ(3)→札幌