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(5)パリ [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]

6/29(土)

 今日は曇り空で肌寒い一日でした。地下鉄でポン・マリからイエナまで移動し、パリ近代美術館とギメ美術館の見学をしました。


☆Musee d’Art Moderne de la ville de Paris パリ市立近代美術館(初)

 パレ・ド・トーキョー内にパリ市民の寄贈を母体とする美術館。フォーヴィズム、エコール・ド・パリ、キュビズム、シュルレアリスムなどが並びます。現代絵画はポンピドーセンターの国立近代美術館のほうが有名ですが、こちらは隠れた名画を鑑賞しているような気分で、見物客も数えるほど。ゆったりと美術鑑賞ができました。


 ↓階段を下りた入り口から入りますと目の前がマティスの大作「ダンスⅠ」(壁画357×1282.7)1931-32 


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↓マティス「ダンスまたは妖精たち」1931-1933(絵葉書)


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↓ヴァン・ドンゲン「Le Sphinx」1925 (146×113)


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Kees van Dongen ヴァン・ドンゲン(1877~1968)オランダ出身のフォービズムの画家。フォーヴ期を経て1920年代から洗練された画風になり、社交界の婦人や有名人の肖像画で人気を得ました。これはその肖像画の一枚ですが、タイトルの「ル・スフインクス」といい、モデルの醸し出す雰囲気の謎めいたパワー。忘れられない作品。


↓キリコ  タイトル他不明。


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↓ドニ? 宗教画のようですが詳細不明。

 


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 ほかボナール、モディリアーニ、スーティン、レジェ、ドローネーなど。


 次は同じイオナ駅付近のギメ美術館へ。

☆Musee National des Arts Asiatiques-Cuimetギメ美術館(初)


 アジア美術のコレクションで知られている美術館はリヨンの実業家エミール・ギメの収集品がもとになっています。フランス文部省の委託を受けアジア各地を調査して、持ち帰った美術品とルーヴルの東洋美術部門が統合され1945年に開館。


 1996年春にカンボジアを訪れていますので、まずは1階のクメール美術の展示室へ。「南大門の阿修羅と神々が大蛇ナーガを引き合っている像のある橋(一部はパリのギメに収蔵されたため模刻)の見事なこと!」と感嘆したあのときのオリジナルがやはりここの一番の見どころです。カンボジアの歴史のなかでもっとも繁栄した王朝(12~13世紀)のころ造られたもの。またインド、中国(とくに西域)、日本の美術品も逸品揃いです。


 それからエッフェル塔へ向かいました。ランチは事前に予約してあったエッフェル塔にあるレストラン「ジュール・ヴェルネ」です。エレベーターのところでキョロキョロしてると、黒服の案内役の男性が専用のエレベーターに案内してくれました。素晴らしい眺めに感嘆しつつ窓際の席に案内され、これまでの人生で一番の(お値段もハイソ汗)高級フレンチをいただきました。少量ずつ8品のコースでしたが、当時は珍しかったので、ソムリエさんに「日本の懐石料理みたいね」というと、それを目指しているとのお答えで、日本の食文化を誇りに思う私たちでした。


 午後はマレ地区の散策とコニャック・ジェイ美術館の見学です。マレは初めてのひとり旅以来パリに来るたびに訪れるところです。古い貴族の館も点在していて、その建物を美術館に転用したピカソ美術館やカルナヴァレ美術館など。庶民的な界隈でありながら、文化の薫り高いパリらしいエリアです。


Musée Cognacq-Jay コニャック・ジェイ美術館(初)


 パリの「サマリテーヌ百貨店」の創業者エルネスト・コニャック夫妻のコレクションをもとに1990年、16世紀に建てられたドノン館にコレクションが移され公開。広壮な館には18世紀のフランス風俗画が多く展示され、ロココ調の優美な家具や調度品で飾られています。

↓圧倒的に多かったのはグルーズの少年や少女の肖像画。可愛らしいけれど甘美過ぎて飽きてしまいます。「赤いジレを着た少年」1775  40.6×32.2


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他にはシャルダンやヴァトー、フラゴナールなど。

↓ここで見逃せないのはレンブラントの「バラムのロバ」(1626) 65×47


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旧約聖書の民数記(22-24)が典拠。図像ではバラム(預言者)がイスラエルの民を呪うためにロバに乗って連れていかれる途中、天使が現れ止められる場面。珍しい主題ですがレンブラントが20歳で描いた初期の宗教画。



 この近くに素敵なプチホテルを見つけ覗いていましたら、レセプションの方がロビーまでどうぞと声をかけてくれました。日本の雑誌にも掲載されたそうです。(翌年ここに宿泊)

ランチが豪華版でしたので、夕食は慎ましく部屋食ということにして、帰途中華のお惣菜などショッピング。おにぎりと味噌汁など手持ちのものを追加して、3人で賑やかに食事。さて、明日からはブルターニュ方面に出かけます。








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(4)ランス~シャロン・アン・シャンパーニュ(レピーヌ)~パリ [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]

6/28(金)Reins7:20→Chalons-en-Champaigne8:00/10:35→ParisEST12:05


 夏時間の新しい時刻表で確認したところ、やはり予定していた列車はなく、早朝の出発になりました。ホテルの朝食は7時からなので間に合わずパスして、駅のスタンドでコーヒーとパン。シャロン・アン・シャンパーニュ駅に着き、荷物をロッカーに預けようとしましたが満杯です。困っていましたら、突然日本語で「駅の事務室で預ってくれるよ~」振り返るとアメリカ人らしいシニアの白人男性です。彼は荷物をピック・アップするところで、一緒に事務室に行きました。どういうわけか駅員さんは私たちの顔を見て預からないというので、彼が「それはないでしょ!」みたいなことを言って抗議してくれて、無事預けることができました。日本に何年か滞在していたそうで(多分軍人さん)、リタイアした後旅行しているそうです。びっくりするほど大きなトランクを抱えて彼は去っていきました。


 さて、ここからタクシーでL'Épine/レピーヌ村に行く計画です。でも駅前にはタクシーは一台もいません。道路を渡ってカフェで尋ねると待っていれば必ず来るよというので結局15分以上は待ちました。東へ8Kほどのレピーヌ村はミシュランのガイド本で知ったのですが、小さな村にそぐわないほど立派なゴシックの教会があります。


 そのレピーヌのノートルダム大聖堂はかなり交通の激しい幹線道路の脇に建っていました。道沿いに民家やオーヴェルジュ(ミシュランの星付きレストラン宿)が並んでいるだけの静かなというか辺鄙な街道筋の村です。

☆Basillque Notre-Dame de L'Épine レピーヌのノートルダム大聖堂

 中世からの聖地巡礼の道筋にある重要な聖地でした。羊飼いたちが燃える茨のなかの聖母の彫像を発見したという伝説が残っています。15世紀初めにランスの大聖堂をモデルに次第に大きな教会になりました。

↓全景(絵葉書)


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↓西正面はフランボイヤン・ゴシック様式(16世紀)


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↓内に入りますと讃美歌が・・・雰囲気満点(スピーカーでも 笑)

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↓南側は広い墓地になっていて、屋根には奇怪なガーゴイユが林立。夜は近寄れないような怖ーい怪物たち。

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↓南扉口


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↓ふと下を見るとカーテンの彫物。昨日のフジタのチャペルのカーテンと同じ!シャンパーニュ地方にはこういう意匠が多いのでしょうか?


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ロマネスクの聖堂を巡ることが多いのですが、たまたま訪問したここエピーヌの大聖堂は思いがけず面白い体験になりました。1時間後にお迎えを頼んだタクシーが来るまでは、教会の正面のカフェ・テラスでのんびりお茶タイム。


駅で荷物を受け取り、パリに戻りました。日本を離れてまだ4日目というのにお寿司が食べたくなって、サン・ジェルマン・デ・プレの寿司屋へ。ビール、いつもの貝類と海草の酢の物、手巻きの納豆まきなどでランチ。2時過ぎにサン・ルイ島のホテルに舞い戻って休憩&昼寝。いつの間にか夕方になり、5時ごろ隣室から声が・・・オスロへ行かれていたIさんがご家族と別れてパリに到着されたのです。これからは3人の旅が始まります。


そして6時半ころオペラ・バスチーユへ。窓口でチケットを受け取ろうとしたのですが・・・大変なことになりました!今日の公演は週末だったのでインターネットでは完売だったので、昨年も利用したことのあるパリのチケット屋でNET予約しました。カードの引き落としも済ませていましたし、引き替えのメールのコピーを窓口に出したのですが、どうも様子がおかしいのです。奥から係りの女性が出てきて「予約は確かに受けたが、この会社は機能していなくて、代金が入らなかった。申し訳ないがあなたの席はありません。」え~っ!!そんな馬鹿なこと!!顔から血がひいていくのがわかるほど動揺しました。「・・・私はチケットが欲しいです。お金も払うことができます。」とお願いするが「当日券の窓口はあちらです」とだけ。友人に訳を話し、窓口に並んだのですが既に10人ほどが行列しています。『ルサルカ』は評判が良いらしく、劇場前もいつものダフ屋の姿はなく「チケット求む」の人ばかり。窓口の行列は動かず、駄目かなとあきらめかけたその時、二人の男性が現れました。連れが急に都合が悪くなったので定価で譲りたいと言うのです。北欧から駆けつけた友人が「疲れていて居眠りしそうだから、私はいいわよ」と辞退してくれました。あたふたと席にむかったのが開演5分前。怒りと困惑で心騒ぐままのうち・・・開幕。テレビカメラが入っていたのでこの公演はそのうちBSでも放送されると思います(後日DVDにもなったので購入)。


♪ドヴォルジャーク『ルサルカ』

指揮:ジェームス・コンロン  演出:ロバート・カーセン

ルサルカ:ルネ・フレミング  王子:セルゲイ・ラリン
湖の精:フランツ・ハウラータ 異国の王女:エヴァ・ウルバノーヴァ
魔法使い:ラリッサ・ディアドコーヴァ

舞台はいかにもカーセンらしい斬新なもの。ボヘミアの森や湖の影もなく、真ん中に四角のプール、白い壁に椅子やベットが宙づりになっていて、幕が変わるとそれらが降りてきて室内風景になります。白い壁は照明によって空や湖の青・・・それはマグリットのブルー。何幕目だったか黒服のバレエダンサー達がその青を背景にして立ったシーン「これで山高帽だったら・・・完璧!!」とマグリット好きなわたしは先程のショックも忘れていつしか舞台に魅せられていました。タイトルロールのルネ・フレミングは一度ヴェルレクで聞いただけですが、それがとても良かったので、生オペラが楽しみでした。はじめはあらこんな声だった?と思うほど調子悪いみたいで、アリア「深々と空にかかるお月様」も声の伸び、音の繋がりに無理がかかってるように聞こえハラハラ。それでも次第に乗ってきたのはさすがです。存在感のある舞台姿も綺麗で、王子の心変わりに絶望して歌ういくつかのアリア、集中力のある歌唱に引き込まれました。ラリンは2日前の代役にいささかお疲れ?でもこちらの役のほうが彼に合っています。特筆すべきはハウラータの立派な水の精のバス、深々と胸にしみる歌唱。このオペラのテーマ「水」の輪廻をも感じさせます。ディアドコーヴァも文句なしに素晴らしい。主役ふたりより断然ハウラータとディアドコーヴァが良かったので、舞台も引き締まりました。
カーセンの刺激的、知的な演出、洒落た舞台とコンロンのメリハリの利いた音楽とが一体になって、満足。こういうシュルレアリスティックな舞台は日本では観られないでしょう。謎解きの知的な刺激に満ちた洗練されたオペラ。パリは素晴らしいね。来てよかったね~!とE子さんと賑やかな
週末のサン・ルイ島へ帰りました。

以前に利用したチケット屋でしたが、私のうかつさのせいでオペラも見られず、文句も言わずに、慣れない道を独りで先に帰った友人には本当に申し訳なく思いました。しかも寝ないで待っていてくださって、感謝感涙でした。チケットを友人の分も取ってあげるのは、こういうことも不可抗力とはいえ責任があることを痛感しました。なお後日チケット代はカード会社から返金されました。


三人で手持ちのものにIさんのノルウエィ土産の鰊の味付け干物を肴に「これから3人で仲良く旅をしましょう~」と、プチ宴会。

参考映像:帰国後購入したものですが前述したとおり同じキャストです。


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また、地元のオペラ鑑賞会で観ていましたが、演技と歌唱は別々なので好みではなかったのかしら?ほとんど記憶に残っていません。

Rusalka
(96. 4)(96. 5)(99. 1)
 ルサルカ・・・・・・・カテジナ・マハーチコヴァ(演技)
ミラダ・シュブルトヴァ(ソプラノ)
王子・・・・・・・・・ミロスラフ・ノヒーネク(演技)
イヴォ・ジーテク(テノール)
外国の公爵夫人・・・・・マリエ・マールコヴァ(演技)
アレナ・ミコヴァ(ソプラノ)
魔女・・・・・・・・・スラーフカ・ブジーノヴァ(演技)
マリエ・オフチャーチコヴァ(アルト)
水の精・・・・エヴァルト・ハーケン(演技、バス)
森番・・・・・・・・ラジスラフ・クレチュメル(演技)
イジー・ヨラン(テノール)
皿洗いの少年・・・・・・・・ミハル・ミケシュ(演技)
イヴァナ・ミクソヴァ(ソプラノ)
木の精1・・・・・・・ ハナ・ジュジヒンツォヴ(演技)
ヤドヴィガ・ヴィソチャンスカ(ソプラノ)
木の精2・・・・・・・・ヤナ・ホウトコヴァ(演技)
エヴァ・フロビロヴァ(ソプラノ)
木の精3・・・・・・・・・リブシェ・クラーロヴァ(演技)
ヴィエラ・クリロヴァ(ソプラノ)
狩人・・・・・ヴァーツラフ・ベドナーシュ(バリトン)
プラハ国民劇場管弦楽団・合唱団
指揮:ズデニク・ハラバラ
合唱指揮:ミラン・マリー 


 



 

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