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(10)ミュンヘン [2002初夏友人たちとヨーロッパの旅]

7/4(木)

 今日は私一人がオペラ観劇『ワルキューレ』です。開演16:00なのであまり時間もなく、天気も悪いので近くを散策することにしました。州立劇場に隣接するレジデンツを見学。旧バイエルン王国ヴィッテルスバッハ王家の王宮。現在は博物館や劇場として公開されています。11時のからくり時計に間に合うように駆け足で回りマリエン広場へ向かいました。日本人ツアーの人たちに交じって見学。それにしても盛夏とは思えない冷たい雨が降ってきました。近くのデパートに駆け込み、厚手のレインコートや木綿編みセーターなどの買い物。どちらもサイズが合わず大きすぎですが、意外に重宝しました。宿に戻り休憩後劇場へ。


これまでの私の数少ないオペラ体験の中で、もっとも強力な印象を与えてくれた演出家はヘルベルト・ヴェルニケでした。彼の演出する『ワルキューレ』がミュンヘンであるとのことで、旅の予定はこの公演を中心に立て、無事にチケットも2月に予約。とても楽しみにしていたのです。

ところが、ヴェルニケは4月にバーゼルの路上にて倒れ、急逝してしまったのです。享年56歳。
そのニュースは地元の北海道新聞にも載ったほど。クラシック界のニュースはあまり取り上げられないので、夫が見つけ教えてくれました。ショックで、しばらく呆然。。。

ヴェルニケは自分の演出ではいつも装置や衣装も手がけ、その隙無く構築された舞台には魅了されました。女性歌手の衣装は常にエレガントなドレス姿。横向きに配する立ち姿の美しさは今でも目に焼きついています。時には大胆な読み替えも、私には少しの違和感もなく、洗練され、知的な刺激に満ちたものでした。完成することはなかったのですが遺作となった『ワルキューレ』。プログラムにも追悼記事が組まれ、ヨナス氏やニケ・ワーグナー女史の追悼文などに、多くのページが割かれています。ドイツ語なので読めないのは残念。


↓ワグナーの像を見上げるヴェルニケとニケ・ワーグナー?プログラムから転載


Wernicke1.jpg



 いよいよ幕が上がり、序曲が始まると胸が詰まり、熱いものがこみ上げてきました。今はただ冥福を祈るだけ・・・。


♪~ワーグナー『ワルキューレ』16:00開演 席は平土間前方左端。


指揮:ズービン・メータ  演出:ハンス・ペーター・レーマン/コンセプト:ヘルベルト・ヴェルニケ

ジークムント:ペーター・ザイフェルト   ジークリンデ :ワルトラウト・マイヤー
  ウォータン :ジョン・トムリンソン     ブリュンヒルデ:ガブリエレ・シュナウト
  フリッカ      :藤村実穂子             フンディング :クルト・リドル



 歌手たちも錚々たるメンバーを集め、メータの明快な指揮やオーケストラの輝かしい響き。席も平土間の前(4.5列目?)の左側。打楽器がやや左壁に反響するのにも慣れてきて、ワーグナーの世界にどっぷり。
舞台はバイロイトの歌劇場の内部を模して、中央にはワルハラ城の小さな模型が見える。1幕で剣を抜くシーンはトネリコの木が中央に倒れて置かれていて、意外に簡単に抜いてしまうのであれれ!マイヤーが昨年のウィーンの時より痩せていて、そのためか声にあのときの艶やかさには及ばない。ジョン・トムリンソンは全盛期を過ぎたとはいえ、この役はやはり彼しか考えられない。
2幕の騎行の場面、乙女たちは華やかなロングドレスにミリタリーなカーキ色のトレンチコートスタイルで、せっせと戦死した兵士たち(人形)を運ぶ。
3幕の父と娘の別れは、恋人たちの別れのように切ない。シュナウトは初めて聴いたのですが、登場した時から全開の見事な歌唱に驚きました。ザイフェルトは一時不調とのことで心配でしたが、素晴らしい歌唱で、完全復帰といっていいでしょう。ジークムントにしてはやや軽めなテノールかもしれないが、悲劇のヒーローらしい切なさと若さが表現されていました。藤村も完璧なフリッカ!最後のシーン岩山に炎が点火される場面はちょろちょろの炎で物足りない。そのせいか幕が下りたとたんにブーが飛んで。天国のヴェルニケにもこのブーが届いたような気がして、思わず首をすくめてしまいました。今でもあのときの舞台が鮮烈に蘇ってきますが、ところどころ何故一角獣が?とか不明な部分も。でもメータの指揮やオーケストラも含めて一体感のある優れた舞台で、ワーグナーを満喫できました。

30分の休憩2回を含めて6時間。疲れ果てお粥の夜食。


参考映像:ワーグナー:楽劇《ヴァルキューレ》全曲1980年収録/クラシカジャパンで放映

ジークムント…ペーター・ホフマン(テノール)
フンディング…マッティ・サルミネン(バス)
ヴォータン…ドナルド・マッキンタイア(バリトン)
ジークリンデ…ジャニーヌ・アルトマイア(ソプラノ)
ブリュンヒルデ…グィネス・ジョーンズ(ソプラノ)
フリッカ…ハンナ・シュヴァルツ(メッゾ・ソプラノ)
ゲルヒルデ…カルメン・レッペル(ソプラノ)
オルトリンデ…カレン・ミドルトン(ソプラノ)
ヘルムヴィーゲ…カティ・クラーク(ソプラノ)
ヴァルトラウテ…ガブリエレ・シュナウト(メッゾ・ソプラノ)
ジークルーネ…マルガ・シムル(ソプラノ)
グリムゲルデ…イルゼ・グラマツキ(アルト)
シュヴェルトライテ…グェンドリン・キレブリュー(メッゾ・ソプラノ)
ロスヴァイゼ…エリーザベト・グラウザー(アルト)

バイロイト祝祭管弦楽団
指揮:ピエール・ブーレーズ
演出:パトリス・シェロー


参考CD:ワーグナー:楽劇《ヴァルキューレ》全曲1965年収録

ジークムント・・・ジェームス・キング

ジークリンデ・・・レジーヌ・クレスパン

フンディング・・・ゴットローブ・フリック

ヴォータン・・・ハンス・ホッター

フリッカ・・・クリスタ・ルードヴィッヒ

ブリュンヒルデ・・・ビルギット・ネルソン

オルトリンデ・・・ヘルガ・デルネッシュ

ヴァルトラウテ・・・ブリギッテ・ファスベンダー

シュヴェルトライテ・・・ヘレン・ワッツ

ヘルムヴィーゲ・・・ベリット・リンドホルム

ジークルーネ・・・ヴェラ・リトゥル

グリムゲルデ・・・マリリン・タイラー

ロスヴァイセ・・・クラウディア・ヘルマン


指揮・・・サー・ゲオルグ・ショルティ

ウィーン・フィルハーモニー


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